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『省令改正「時期尚早」指摘相次ぎ見送り?』 しかし…
8月7日~9日にかけて、福島県内の新聞、テレビのニュースでは、飯舘村長泥地区で除染土を覆わずに野菜の栽培の実証実験が行われていることが報じられました。
除染の土 覆土せず野菜栽培をする実証事業へ 福島 飯舘 [NHK]
原発除染土、覆わずに栽培試験 飯舘村で環境省が方針転換 [共同通信]
除染土覆わず野菜試験栽培 「説明不十分」指摘も [朝日新聞]
報道記事内では触れられていませんが、この野菜の実証実験には、環境省が4月1日に行う予定だった省令改正(除染土を公共工事に利用)が先送りになったことと深く関わっていたのです。
まずはNHKが3月28日に、『除染土再生利用に向けた法令改正「時期尚早」指摘相次ぎ見送り』と、パブリックコメントに寄せられた多数の反対意見から、環境省が省令改正を先送りにしたことを報じました。
その後を追って、朝日新聞は3月30日に省令改正先送りを報じています。しかし、それから一カ月後の5月2日付の同紙記事『除染土の再利用地で、野菜の試験栽培開始 環境省』では、以下のようになっています。
『
しかし、地元から「食用作物も育てたい」との声があり、改正を先送りすることを決めた。食用作物は人が口にするため、安全性を改めて調べる必要があり、「実証事業」の中で野菜も育てることにした
』
先に述べた3月30日の同紙の記事ではNHKの報道内容と違いはありません。以下が、3月30日記事の該当部分です。
『
4月1日施行を目指していたが、パブリックコメントに「説明不足」など3千件近い意見が寄せられ、引き続き検討することにした
』
二つの記事にある、先送りの理由「パブリックコメントに寄せられた多数の反対意見」と「食用作物を実証事業に追加」。まったく違う報道内容に、どちらが事実なのかと思っていました。
それが、大島堅一教授が行った行政文書開示請求で開示された文書によって判明しました。5月2日に報じられた「食用作物を実証事業に含めるため」が事実であり、環境省は、パブリックコメントの意見を尊重し、最終的に省令改正を先送りにしたのではなかったことが分かりました。
この事実に、私は環境省には二重に裏切られたと感じます。
一つは報道機関に出した情報が、限りなく偽りに近いと思われること。もう一つは、パブリックコメントによって行政の方針を動かすことができる可能性があると市民に誤解させたこと。
特に、環境省が省令改正の見送りの言い訳をパブリックコメントに求めたことは、「パブリックコメント」という行政上の手続きの信頼を失墜させる行為だと思います。
パブリックコメントを蔑ろにした今回の一件は、福島県内でも大きなニュースとして扱われていません。しかし、行政側が市民の意見を汲んだように見せかけて、実は極秘裏に進めた計画の隠れ蓑にしたという意味で、非常に悪質な案件だと思います。
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