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東京電力福島第1原子力発電所の「石棺」化

 最近、東京電力福島第1原子力発電所(以下、第1原発)の廃炉処理で、福島県内で問題になったことについて取り上げます。
 7月14日、福島県内のマスコミが、原子力損害賠償・廃炉等支援機構01が第1原発の廃炉処理の戦略プランの一つとして、「石棺」を行う案02を盛り込んだと報じました。「石棺」はチェルノブイリでも行われた、原子炉建屋をコンクリートの建造物で覆い、放射性物質の拡散を防ぐ方法です。しかし、「石棺」は溶け落ちた核燃料の回収の目途が立たない場合に行われる応急処置でもあります。そのため、強烈な放射線でコンクリートは劣化し、チェルノブイリでも30年ともたずに、さらに上から覆うドームを建造して被せることにしました。これまで、第1原発の廃炉については溶け落ちた燃料を回収することを前提としているので、「石棺」化は検討から外れていました。
 今回、原子力損害賠償・廃炉等支援機構が「石棺」の情報を出したのは観測気球、もしくは小出しに情報を出して住民側を徐々に慣れさせていくのが目的だと受け取れます。現時点で第1原発のような形で溶け落ちた核燃料の取り出し技術は無いので、「石棺」化は選択肢として上げておかないとマズイからです。しかし、住民からすれば溶け落ちた核燃料が鎮座する建造物が目の前にあるのでは安心して暮らせません。多くの住民が戻らないとなれば、双葉町と大熊町は自治体としては消滅するしかないでしょう。「石棺」を自治体の首長が認めては、自治体が死に体になるから、絶対に認められない。だからこそ、今回の「石棺」計画には一斉に反発の声03が上がりました。
 しかし、これでは溶け落ちた核燃料が取り出せるという裏付けがないのに、核燃料サイクルと同じように実現することを前提に動いているように見えます。廃炉の技術的問題は、NHKの時論公論04でも「国が掲げる40年で廃炉が達成できるのか?」と疑問を示しています。まさに、TBSラジオの崎山記者が言っていたように「原発は願望の歴史、その願望は裏切られていく歴史。また、無駄な事を繰り返すのか」05です。
 国は、東日本大震災から復興したということを4年後の東京オリンピックでアピールするため、住民との合意形成もせず、半ば強制的に避難区域を解除しています。そして、復興庁が解散するタイミングで、国は廃炉や汚染土の処理に、より強行的な姿勢になる可能性があります。「石棺」にはしないと言っておいて、「最終的に石棺にするしかありません」となったら、帰還した人たちはどう思うのでしょう。暗澹たる思いになります。
 住民のことを思うのなら、国は希望的観測にもとづいた案だけでなく現実的な案も提示し、厳しいかもしれませんが、自治体の首長もそれに反発するだけでない見解を示すべきだと思います。

(あべひろみ)

 
※01 原子力損害賠償・廃炉等支援機構(げんしりょくそんがいばいしょう・はいろとうしえんきこう、英語: Nuclear Damage Compensation and Decommissioning Facilitation Corporation)とは、2011年3月の福島第1原子力発電所事故に伴って官民共同出資で設立された、原子力損害賠償・廃炉等支援機構法(平成23年法律第94号、旧:原子力損害賠償支援機構法)に基づく認可法人。(Wikipediaより)

 
※02 なぜ今、唐突に 「石棺化」言及 導入の布石か | 東日本大震災 | 福島民報
   福島民報2016年07月16日1面 魚拓

 
※03 「帰還や復興に水差す」双葉郡首長ら 第一原発の「石棺」言及 | 東日本大震災 | 福島民報

 
※04 時論公論 「福島第一原発 40年廃炉は可能なのか」
   時論公論 「東日本大震災5年 試練続く福島原発廃炉への道」
   時論公論 「チェルノブイリと福島 遠い廃炉」

 
※05 TBSラジオ 「荻上チキ・Session-22」2015年05月21日「崎山敏也記者の原発ニュース・スペシャル!」(探究モード)において、崎山記者が述べた持論。
 

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