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「原発事故との戰い」

 平成29年度早々、今村前復興相は度重なる失言から事実上の更迭となり、福島県いわき市出身の吉野正芳氏が新たに復興相に就任しました。そんななか、5月22日に河北新報の取材を受け※1、『東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興について「原発事故との戦いに、われわれ人類が勝たねばならない」と強調した』と報じられました。わたしとしては、正直なところ、「またか…」とため息が出ました。
 この発言は、復興担当の行政の長として、被災した地に住む住民の意気を鼓舞するためなのかもしれません。安倍首相風に言えば、「古里を取り戻す」ということなのでしょうが、現時点でメルトダウンをした核燃料を回収するという行為は、勝てるはずのない戦いに向かっていくという点で、先の戦争の教訓を何も生かしていないことと同じです。
 吉村復興相は「千年、二千年かけて育まれた文化がある。費用対効果という価値観で地域をなくしてはいけない」と語っていますが、その費用対効果だけでは語れない価値を破壊したのが「原発事故」という「核災害」です。先述したように、この「核災害」で起こった事象を、現在の科学の力で抑え込むことは、ほぼ不可能です。わたしたちは、これから数百年かけて放射性物質が物理的に半減していくのを待つしかない。制御不能になってしまった核の前では、人が如何に無力であるかを認識して謙虚にならなければいけないのではないか、と思います。
 また、このインタビューでの発言は、4月27日の所信表明で原発事故に触れなかったことで野党から批判が相次いだことからの反省なのかもしれません※2。しかし、たとえ原発事故に触れたとしても、「原発事故に勝つ」というような極端な発言では、やはり「事の深刻さ」が分かっていないのではないか、と思わざろうえません。もしくは、安倍政権という枠組みのなかでは、閣僚の一人として、このような男根主義的主張をアピールしなければならないのでしょうか。
 しかし、5月17日のNHK福島の報道※3では、この春、避難が解除された四町村で帰還したのは800人余り、帰還率は2%だと報じていました。性急に決められたと思われる避難解除に対して住民の方々も、今すぐの帰還に躊躇しているようです。そのうえ、今後は避難解除がされた地域の方々も、実質的に自主避難者という枠に入っていかざるを得ません。この1~2年にあった自主避難者問題が、この大々的な避難解除で拡大していくことが予想されるわけで、せめて、被災地出身の閣僚として、大言壮語ではなく、このサイレントマジョリティ(物言わぬ多数派)の声に応えていってほしいと思います。

(あべひろみ)

 

※1 <復興相>就任1カ月 福島再生成し遂げる | 河北新報オンラインニュース 2017年05月23日

※2 吉野復興相、所信で「原発事故」触れず「反省している」:朝日新聞デジタル 2017年04月28日

※3 一斉解除4町村の住民帰還率2%|NHK 福島県のニュース 2017年05月17日

 

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